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業界ニュースvol.262019/12/01 業界ニュース

gyokai.pngmatsui.pngのサムネイル画像 前号では、民法改正後の賃貸借契約に関して、実際の契約関連についての情報を整理する形で、基礎的な部分を中心にお伝えさせていただきました。
今回は実際に民法改正に関するご相談をいただいたオーナー様からの質問に対して回答いたします。

【Q1】
 民法改正前に契約した賃貸借契約において、民法改正後に退去が発生し原状回復を行う際には、家主負担部分と借主負担部分の負担割合や敷金などは、改正後の民法に該当するのでしょうか?それとも契約が改正前の契約なので改正前の取り決めごとになるのでしょうか?
また、改正民法が施行されると、家主の原状回復費用の負担はどのように変わるのでしょうか?

【A1】
 民法改正前に締結された契約であれば、改正民法が施行された後も、改正前の民法が適用されます。ただし、2020年4月1日以降にて、当該賃貸借契約の合意更新を行った場合は改正民法が適用されるので注意が必要です。合意更新ではなく、新たに契約を締結した場合も同様です。
次に、原状回復の費用負担についてご説明させていただきます。改正前民法では、使用貸借契約における598条を準用する616条により、抽象的に原状回復義務というものが定められていました。改正民法は、この原状回復義務の範囲について、賃貸借から生ずる通常損耗や経年劣化は、原則として原状回復の範囲に含まれないと判示した、平成17年12月16日最高裁判決に沿って定められたものです。
そのため、改正前民法との比較において大きな変更が加えられたものではありませんが、
①通常損耗等については賃貸人(家主)負担であることが最高裁判決に倣い明記された、②通常損耗等以外の損傷について賃借人(入居者)に帰責事由がない場合、賃借人(入居者)は原状回復義務を負わないことが明記された、という2点が注目されています。原状回復義務に関して特別対応が必要となる改正ではありませんが、それが故に依然として、原状回復の範囲や内容等に関する対応を、契約書の条項にて定める必要があることに留意すべきでしょう。

【Q2】
 現在管理会社を介さず、物件の管理を行っております。改正民法が施行されると、連帯保証人について極度額の設定が義務付けられるため、契約書をすべて作り直さなければならないと伺いました。これが事実ならば入居者側と直接やり取りをしなければならず、かなり億劫です。これは必ず行わなければならないのでしょうか?

【A2】
 まず検討しなければならないのは、改正民法が現在の連帯保証契約に適用されるかどうかです。
保証契約は、賃貸借契約が合意更新された場合においても、信義則に反する事由のない限り、更新後の賃貸借契約に及ぶものとされています(最高裁平成9年11月13日)。そのため、賃貸借契約と異なり、改正民法施行後、保証人と新たに契約を締結し、又は保証契約を合意更新しない限り、現行法が適用されることとなります。
このことから、必ずしも保証契約について、契約書を全て締結し直さなければならない、ということではない、と思われます。他方で、一定の事情により改正民法に沿った形で保証契約を締結し直す場合には、特に次の点に注意する必要があります。
まず、個人が保証人となる場合、当該保証契約は個人根保証契約に該当することとなるため、極度額の定めを欠くことができないという点です。次に、極度額の定めについて上限はありませんが、過度に重い責任を保証人に負わせようとすれば、信義則上制限される余地が生じるという点です。改正民法に沿った保証契約を個人と行う場合は、このような点に注意しながら締結を検討することになります。
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