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vol.38 入居者が退去せず、新入居者が 入居できない場合の法的責任と対応2021/03/19 業界ニュース

今回は、入居者が退去せず、新入居者を入居させることができない場合の法的責任と対応について、オーナー様より度々ご相談のある事例をご紹介いたします。

Q.
入居者が2月中に退去する予定だったのですが、引っ越しの手配ができなかったのでもう少し先に退去したいと言い出し、その後4月に入っても退去していません。
その結果、41日から入居予定だった新しい入居者が入居できず、私(オーナー)に損害賠償させ
言っています。前の入居者が退去しないのが原因だから、私には関係ないですよね?

A.
関係ないとは言えません。
所有者(オーナー)が、新しい入居者に対して損害賠償責任を負う可能性があります。


こちら繁忙期などにときどきご相談のあるトラブルです。オーナーからすれば、退去すると言っていたのに退去しない前所有者が悪いのだから、オーナーは関係ないといいたいところかもしれません。
ですが、法律上は新しい入居者との賃貸借契約により、賃貸人として新しい入居者に対し、契約上の入居予定日に使用収益できる状態で物件を引き渡す義務を負うのはオーナーです。
ですので、たとえばオーナーは入居できなかった新入居者に対し、債務不履行責任を負い、入居することができずにホテルに泊まらざるをえなかった宿泊費であったり、引っ越しをキャンセルした際のキャンセル料など、入居できなかったことにより発生した損害を賠償する義務が生じることが考えられます。
もちろん、オーナーは新入居者に損害賠償した後、約束どおり退去しなかった入居者に対し、損害賠償することも考えられますが、損害賠償をめぐるトラブルにオーナーも巻き込まれてしまいます。
では、事前にどのような対策が考えられるでしょうか?
民法上、債務不履行があっても「その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由」つまり、帰責性がなければ賠償責任は負いません。
ですので、しっかり行うべき対応を行いましょう。たとえば、退去が決まった場合にはしっかりと書面等の記録が残る形で退去意思を記録に残し(記録が残っていないと、本当に退去する約束だったかどうかですら曖昧になってしまいます。)、2月中に退去といった曖昧な退去日ではなく退去(予定)日をしっかり特定します。退去がなされない場合には、新入居者の入居予定日などを伝えて、現入居者に退去しないと新入居者に損害が発生することを伝えて、退去後の原状回復に要する期間などを見据えて、具体的に新入居者の入居予定日までに退去しない可能性を認識した場合には、速やかに状況を新入居者に伝えることが望ましいと考えられます。必要に応じて法的手段を執る方法も考えられます。
このような対応を取ることによって、損害賠償責任を負うリスクを下げ、損害賠償等が発生するとしてもその責任の範囲を限定することができます。トラブルというのは問題が生じる芽が出た時点でいかに対応するかによって事態が変わってきますので、そのことを再認識して頂けたらと思います。

㈱船井総合研究所 不動産支援部 上席コンサルタント 松井 哲也


(債務不履行による損害賠償)

民法第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。