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vol.71 外国人であることを理由に 入居を拒否して損害賠償?2024/01/24 業界ニュース

事例
入居希望者が日本国籍を持たないことがわかりました。
入居に向けて話が進んでいたのですが、賃貸借契約をやめたいと思います。
なにか問題はあるでしょうか?

ホテルや旅館などとは異なり、賃貸の場合には、基本的に貸主は借主と契約を
締結するかどうかについての自由があると考えられています。
「契約を結ぶかどうかをそれぞれの個人が自由に決めることができる」と考えられているからです。
これは「契約自由の原則」の内容の一つです。
その為、誰に対して物件を貸すかどうか、についても基本的には貸主の自由、
貸主の判断に委ねられているということができます。
ですが、どのような場合も自由というわけではなく「国籍」のみを理由として賃貸借契約を拒絶したり、
「国籍」を理由とした差別的な扱いをした場合には、損害賠償等の問題が生じる可能性があります。
以下に2つの裁判例を紹介します。

1)入居申込者の国籍を理由に賃貸借契約の締結を拒絶して損害賠償責任を負った事例
借主会社が、日本国籍のない従業員を入居予定者とする賃貸借契約書及び必要書類を提出しました。
ですが、貸主が、審査の最終段階において入居者に日本国籍がないことを理由として契約を拒否しました。
判決では、合理的な理由がないにもかかわらず契約の締結を拒んだものであるとして損害賠償責任の一部を認めました。
(慰謝料100万円と弁護士費用の一部10万円)
※京都地方裁判所判決 平成19年10月2日、RETIO.2008.2 No.69を参照)

2)A国人には仲介しない」との説明が差別的であるとして慰謝料が認められた事例
こちらは賃貸借契約の締結を断ったところ、すでに賃貸借契約が成立している、という主張と、
媒介業者の「A国人には仲介しない」という発言が差別的であるとして損害賠償請求を受けました。
判決では、賃貸借契約がすでに成立しているという主張は認められませんでしたが、
発言については客観的に見れば差別的なものと捉えられてもやむをえない、として人格権侵害を理由に損害賠償を認めました。
(慰謝料10万円と弁護士費用の一部1万円)
※東京地方裁判所 令和元年10月9日判決 RETIO No.119参照)

1つ目の裁判例は、一定段階まで話が進んでいたのに、合理的な理由なく契約を拒絶したこと、
2つ目の裁判例は、発言自体が差別的であることを理由としています。
「国籍」を理由とした合理的な理由のない差別は、損害賠償を負う可能性があり、
上記のような裁判例があるということは確認しておきましょう。

㈱船井総合研究所 ライン統括本部 上席コンサルタント 松井 哲也